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私もひとこと(2001年9月号掲載)
教育をめぐる
政策動向を憂慮する

丸木政臣 日生連前委員長・現顧問


 「教育改革関連三法案」

 森首相の私的諮問機関として設けられた「教育改革国民会議」が「新しい時代にふさわしい教育基本法」を最終目標とする「十七の提案」を報告書にまとめたのは、昨年十二月二十二日のことであった。この「十七の提案」の具体化のために法律として整備しようとしたのが、「教育改革三法案」である。「奉仕活動の義務化」「問題をおこす子どもを学校から排除」「高校の通学区制の撤廃、大学入学年令の緩和」などを内容とするが、「学校教育法」「地方教育行政法」「社会教育法」など関連法律を変えるのである。それも六月十三日に衆議院本会議に提案をし、常任委員会を強行開催、あと参議院にまわして六月二十九日の会議期限で仕上げようとしている。「十七の提案」から六か月でこれからの日本の在り方を決めようとするのだからきわめておそろしいたくらみだといわなくてはならない。

 ねらいは教育基本法改悪

 中曽根康弘は、「教育基本法」についてこんなことをいっている。「教育基本法ができた昭和二十二年というのは、日本解体の時期でした。再建というのは二十三、四年からです。──だから日本民族の持つ歴史、伝統、文化などという背景は全くない。共同体というものがないんですよ。──したがって今の基本法というのは蒸留水なのです。日本の水の味がしないわけです。だからブラジルでも、メキシコでも、どこに持っていっても適応できるのです。──日本の共同体的秩序、規律、自己犠牲、責任、そんな価値の見直し、新しい伝統文化の観点も重要になるでしょう」と。「日本教育新聞」の一月七日号に「二十一世紀の文明と教学」を軸に「憲法」「教育基本法」の見直しを提唱している。
 「教育改革国民会議」の目標とするのは、最終的には「教育基本法」を、中曽根いうところの「日本民族の持つ歴史、伝統、文化などを内に抱えた共同体の価値を継承できる」ものにしていこうとするところにあるようだ。今回の「教育改革三法案」というのは、その土俵づくりの第一歩として考えられるものであろう。小泉のいう「構造改革」の視野の中には、経済だけでなく教育も入っていると考えてまちがいはないだろう。

 復古主義の亡霊が

 藤岡信勝、西尾完治ら自由主義史観の面々による中学社会科の歴史・公民分野の教科書が文部省検定に合格した。「日韓併合」「太平洋戦争」「南京大虐殺」「従軍慰安婦」「沖縄戦における住民虐殺」など、日本の「負」の史実をすりかえ、正当化するもので、中国や韓国から強い抗議を受けるのは当たり前のことである。ドイツが半世紀を経た今も、ナチスの戦争犯罪を国民の恥辱とし、戦争犯罪を追求しつづけていることなどにくらべたら、日本がかつての侵略戦争を美化することは、将来に向かってきわめて危険なことといわなくてはなるまい。この教科書はひとりサンケイグループ、扶桑社などの責任にとどまらず、中曽根的日本政府の加担によってつくられてきていることと考えるべきである。
 すでに二月十九日には、「新教育基本法私案」なるものがPHP総合研究所・新教育基本法検討プロジェクト(主査・加藤寛千葉商科大学総長)によって発表された。「現教育基本法」の「平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し」と宣言した教育の指標は消され、「わが国の歴史、伝統、文化を正しく伝えることによって立派な日本人をつくる」というようにすりかえられている。
 日本ペンクラブは「PEN声明」を発表したが、「教育基本法の改定は、結果的には教育基本法と密接不可分の関係にある、日本国憲法の改定という政治戦略のお先棒を担ぐ危険をはらむ」と警告を発しているがその通りであろう。

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