日本生活教育連盟第54回夏季全国集会速報

いまを子どもとともに生きる

──新しい時代を拓く学びを求めて──

 学校5日制の開始、学習指導要領の「総合的な学習の時間」の本格的実施、それとのかかわりで起きている「学力論争」など現場では大変な状況が起きている。それだけではない。来年の通常国会で教育基本法の改正(改悪)案を成立させようという動きもある。これから先、日本の公教育はどこへ向かって進んでいこうとしているのかの心配を胸に抱えて大阪に集まって来られたのではないだろうか。
 集会初日(7月31日)の午前中は「生活教育入門」である。今の教育状況を反映しているのだろうか、2、3、6の講座への参加者が多かった。が、どの講座からも講師の熱っぽい語りに満足した感想が寄せられている。速報「ぼちぼちいこか!」から見てみよう。

●入門講座1「生活教育の理論」 川合 章

 印象に残ったこと、いくつか。
 1)川合先生のプロフィール(学徒動員されていた頃のこと)が知れて興味深かった。
 2)理論とは、「自分の実践の正しさ、正当性を明らかにしようとする視点」──なるほど、目からうろこが落ちるくらいすっきりした。
 3)子どもの主体性と大人の指導性の統一の問題で子どもと教師の思いの違いを生々しく出していくべき→励まされた。
 その他、もっと聞きたいことがたくさんありました。時間がもっと欲しかった。(東京・栗原 伸)

●入門講座2「学力問題をどう考えるか」 梅原利夫

 学力問題のうねりの歴史から始まり、現代の学力問題の情勢がよくわかりました。新指導要領が本格的実施となり教科と総合を対立的にとらえる向きがあるが、学習として両者をとらえ「子どもにどんな学力をつけたいのか」「わかる」「できる」「つかえる」のレベルで生活と切り結んだ学力が大切と話されたことなど大変学びを深めることになった。(東京・中河原良子)

●入門講座3「子どもが輝く授業づくり」 金森俊朗

 1)学習課題(教材)が、子ども自身の生活に密着していることが子どもに興味を持たせ、やる気を起こさせる。
 2)算数だから算数を学習させるというのではなく、子どもの思考があらゆる分野に広がる、それに対応する教材教具。
 3)総合的な観点(根底にある生命)を基に教育(授業)を考えていく。(大阪・藤本元子)

●入門講座4「子どもの苦悩と希望」 春日井敏之

 実践、子どもを取り巻く現実、教育にかけられている様々な攻撃、そして、自分自身が50代になり、これからの教員生活をどう生きるかなど、日々苦しいことが多い1学期でした。「ここにきたら春日井先生のやさしさにきっと会える」という気持ちと、自分なりに考えるヒントを探そうと思っていました。子どもたちと共に、日々生きながら春日井先生への子どもたちへの目線の温かさやメッセージがスーッと私の胸に入ってきます。「私は、教室でこんな風に子どもたちと話をしていただろうか」と思いながら、私たち50代の教師に出された「自己変容プロセス」の解明をこれからやっていきます。そして、若い仲間につなげていきます。自分にできることから……。(埼玉・江口美和子)

●入門講座5「子どもとともに学校をつくる」 足立節雄

 教員2年目です。「ゆとり」教育が求められ、週五日制も導入されましたが、現場はますます忙しさに追われている気がします。学校は朝から下校までみっちりとお勉強で、これでは学校に行くのが楽しくなくなってしまいました。
 足立先生のなされてきた教育活動は、砂浜で遊んだり、全校児童でいっしょに給食を食べたりして本当に「ゆとり」の教育だなと感じました。忙しさにマヒしている学校をつまらない空間にするのではなく、人間として心地良いことは何かと、常に考え挑戦していきたいと思います。(沖縄・宮城団志)

●入門講座6「箕面の自然保護と総合学習」 本多 孝

 一つの事象がなくなると、それにつながるいろんなところに影響が出てくるというお話は、具体的でよくわかりました。護岸の話も、深い内容を含んでいて考えさせられました。強い自然、貴重な自然の話もよかったです。(大阪・濱田嵯智子)

 開会全体会は、吹田第六中学校和太鼓クラブの力強い三宅島の木遣り太鼓の音で幕があけた。

 山田高校ダンス部のみなさんによるダンス、中野委員長の挨拶と続き、木村久男さんの実践基調報告がなされる。

 「学級崩壊、荒れという言い方に違和感を感じていた。子どもたちの本来の姿は、そんなものではない」と、ややもすれば、「学級崩壊」や「荒れ」を子どもや家庭の責任に転嫁してしまう傾向に警鐘を鳴らしている。
 いろいろな「問題」を抱えている子どもたちが、お墓調べから始めた平和学習を進める中で見事にそれを克服していったという報告は、聞く者の胸にストンと落ちていく。(詳しくは、日生連大阪サークル発行「総合学習で育つ学力」をご覧いただきたい。
 事務局の井関美季さんに注文すれば一部500円+送料でお分けするとのこと。連絡は072─254─6678まで。)

 記念講演は、「海くん、生きててくれてありがとう」の著者、西原由美さん。広島から海くんもいっしょに、車で何時間もかけて来てくださった。海くんも壇上に上がり、お母さんの話が始まった。
 事故で、医者から「あと5年の命」と宣言されてから「何のために生きていくのか」を自問自答する毎日、でも、いろいろな人との出会い、体験をする中で、見えなかったものが見えてきたとき、前向きの生き方に変わっていったという。
 海くんもお母さんの話を聞いているのでしょう、時々、足を動かしたり顔を動かしたりの反応をする。「俺のこと、きちんとみんなに伝えろよ」とか「きょう参加されている先生方はみんな熱心だね」とか言っているのでしょうか。

 海に連れて行ったり、富士山に登ったり、ハワイ旅行に行ったり(日本とハワイでの障害者に対するかかわり方の違いを実感する)、周りから見ると「無謀」「冒険」と見えることも、ご家族にとっては「普通」のこと、「普通」のようにやってこられたという。
 西原さんは、海くんを通して、「学校へ行く意味」を問い、学校へ行くと海くんの顔つきが穏やかになる、そこに学校の存在意義があることを見出していく。与える方も、与えられる方も共に喜びを感じるところに「ボランティアの意味」があり、いま国が行おうとしている「奉仕活動の義務化」に疑問を投げかけている。そして、命の大切さ、生きていくことのすばらしさを訴えて話をしめくくられた。

 翌日(8月1日)の朝、海くんが梅原先生らと温泉に入ったことを、感想で知った。これも海くんにとっての「冒険」だったのだろうか。

「西原さんの話を、涙をしながら聞きました。海くんが家族の人たちに本当に大事にされていること、海くんと一緒に夢を一つひとつ実現して生きていくことのすばらしさ、どんな重い障害をもつ子も豊かに人間らしく成長できるということ、などを学びました。海くんからの生命のメッセージをクラスの子どもたちにも是非伝えたいと思いました。海くんが一日でも長く生きて欲しいと願わずにはいられません。海くん、ありがとう」(大阪・永田吉康)

「海くんを温泉に入れてあげたいというご夫婦の当然の求めに快く応じさせてもらい、今朝、和光小・中の石川さん、寄藤さんらとともに、海くん、お父さんと温泉につかりました。お湯の中で、ゆったりと身体をまかせた海くんの肌は、つややかでした」(東京・梅原利夫)

 開会全体会の終了後は、各分科会に移ったが、どの分科会からも学校5日制の開始にともなう厳しい職場・勤務状況が報告されていた。
 子どもも教師もくたくたになっている、夏休み中は原則として毎日出勤の学校、この大阪全国集会にも研修を認めない学校(年休で参加)など、異常とも思えるような報告が次から次と報告されていた。
 この異常さを異常と感じないほど感覚が麻痺してしまった人々に教育行政を託せないと強く感じた。(それぞれの分科会の詳しい内容は、「生活教育通信」をご覧いただきたい。)

 毎年好評の「実技講座」、今年は六つの講座が開かれた。生活科、総合学習にどう生かそうかという思いで、みなさん楽しみながら、時には悪戦苦闘しながら取り組んでいた。

●実技講座1「紙芝居 小話を楽しもう」 野間成之

 話術や間の取り方、顔の表情見ていて大変参考になりました。教師も役者としての技能も身に付けていくと子どもたちを引き付けるだろうなと思った。(熊本・村下洋一)

 13年前? 北海道の大会に参加した時、初めて野間先生の紙芝居を見ました。帰って来てすぐに舞台を買い、少しずつ紙芝居を買い、細々、下手なりに続けています。久しぶりに見た野間先生の紙芝居。あんなように体全体で演じると聞く方も楽しいだろうなと思いました。(大阪・石川洋子)

●実技講座2「和太鼓に挑戦」 今西正直

 太鼓へのあこがれは、疎開時の村にまでさかのぼる。村では、太鼓が打てるのは(さわらせてもらえるのは)中学生からだった。盆踊りの夜、踊りの後は太鼓打ちの祭宴で、寒い夜はひときわ盛り上がった。中学生になるのを盆踊りの夜と春秋の祭りを繰り返す中でドキドキしながら待った。しかし、6年生の10月17日、とうとう村を離れて金沢へ帰ることになった。あー。今日今西正直先生の指導で初めて思いきり打った。(神奈川・西口敏治)

●実技講座3「子どもが喜ぶ工作教室」 友田章二郎

 やっぱり手作りはいいですね。できたときのうれしさは、子どもも大人もいっしょです。竹という素材も日本らしくてよかったです。与えられたおもちゃもいいけど自分で作るおもちゃは一味違います。(山口・竹田一博)

●実技講座4「サヌカイト石器を作ろう」 赤井靖彦

 サヌカイトで石器を作りました。ハンマーで石の形をよく見て、思い切りたたきました。その石器でりんごの皮をむきました。そのりんごのおいしかったこと。古代人も、こんなふうに石器を作ったんですね。気持ちがほんの少しわかりました。(東京・内藤良一)

 古代人になった気分を満喫。現代人が忘れかけている手仕事の原点だ。みんな一度は体験した方がいいと思う。(兵庫・望月 彰)

●実技講座5「歌と手遊びで楽しもう」東大阪養護学校バンド

 エネルギー全開 楽しかったなーっ。(大阪・堀口清志)

●実技講座6「わたから糸へ布へ」 平野区「わたの会」のみなさん

 見ているだけだととても簡単そうだけど、やってみると、ウームさすがに職人の技を実感しました。一時間位ではとてもとてもー。昔の人の手先の器用さに驚きました。(愛知・佐藤斉子)

 学校で、今、わたを育てており、児童もしっかりできるか楽しみにしています。二学期に、わたからつむぎ、作品を作る活動を計画していますので、とても参考になりました。紡錘車の使い方が難しかったです。親切に教えていただいてありがとうございました。(大阪・榊原美樹)

 さて、これがあるから日生連集会に行く、という人がいるくらい楽しみにしているレセプション。今年はどこがどんな出し物を披露してくれるのだろうか。

 大会歌「子どもたちに」で幕開け。子ども学校のみなさんによる「荒馬」が披露され大きな拍手が送られる。丸木前委員長の挨拶、松村全教委員長の挨拶と続く。全教の教育研究の中で日生連が果たしてきた役割を高く評価してくださった。つづいて、足立節雄先生の乾杯を「大阪方式」で行い、改めて再会を喜び合った。

 いよいよ、各地の出し物が披露される。
 トップをきったのは埼玉。埼玉は、例年だと「秩父音頭」だが、今年は違っていた。朗読劇と言っていいのか、寸劇と言っていいのか、集団漫談と言っていいのかよく分からないが、日生連集会への参加の仕方(研修なのか年休なのか出張なのか)をめぐっての校長とのやりとりを演じてくれた。「秩父音頭」だと7〜8分で済んでしまうものが、20分近くもの熱演に司会者はハラハラしていた。
 東京は「野にさく花のように」を繁下先生の指揮で歌ってくれた。
 石川は「さとうきび畑」を子どもたちのリコーダー(サークルに親子で集まってくると、大人は実践検討、子どもたちは自主的にリコーダーの練習をしていたとのこと)を伴奏に歌ってくれた。
 現地、大阪も「さとおきび畑」を披露してくれた。偶然、石川と重なってしまっていたが、こちらは本物のサトウキビを手に手に持ち(沖縄から取り寄せたという)「正調・さとうきび畑」を歌ってくれた。

 最後は、愛知県だ。来年の集会は、愛知に決まった。その決意を全障研集会から抜け出してきた竹沢さんが語ってくれた。
 その後は、例の「月光仮面はだれでしょう」を原田宏美さんの指揮で全員合唱。歌いながら、踊りながら来年の集会は、500名参加を目標にがんばることを誓い合った。

 それにしても、久田敏彦実行委員長、井関美季事務局長をはじめ実行委員の皆さんには本当にお世話になった。安心して分科会に参加できたのも、子ども学校や保育担当の皆さんのお陰である。そんなスタッフの中には、森川先生が教えている大学生もボランティアで参加されていると聞く。私は充分つかみきっていないけれど、口では言えないドラマがたくさんあったということもチラッと耳にしている。
 大阪のみなさんご苦労様。そして、ありがとう。

※閉会集会での、久田敏彦実行委員長による総括講演と行田稔彦副委員長による今次全国集会のまとめは、原稿締め切りの関係で載せることができませんでした。ご了承ください。

(文責・曽根啓維)

 

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